2024年5月16日(木) ソフトウェア研究班~ゲームの知財 第5回
日時:2024年5月16日(木)18:30~20:30
場所:日本弁理士会関西会&ZOOM
テーマ:ゲームの知財
内容:
前回までの検討により、「ゲームのルール()が保護されない」とのゲーム業界の嘆きは、保護の法域が著作権のみだと思い込んだ層による誤ったものであり、真に保護されるべき新しいゲームのルールについて特許を活用した保護事例は現に存在することがわかりました。また、著作権法による保護が与えられた場合の70年という期間は、一主体がゲームのルールを独占する期間としてあまりにも長過ぎるという意見が大勢を占めました。<ゲームルールの特許事例>
・特許7201185 詰まるところはジャンケンだが、「勝ち色(クレーム中の第1の背景領域)」と「負け色(クレーム中の第2の背景領域)」とが組み合わされたカードの存在を前提として、実質的に遊び方が特許になっている。
・特許6990208 1対1の対戦型ゲームであることを前提として、手番が交互に入れ替わるのではなく、中央に配置されたルーレット上の駒を動かす欄で、ゲームの進行に応じて駒を動かし、そのコマの位置によって手番が決まることが特許になっている。 そこで、今後のゲーム知財研究は以下の方針で進めていきたいと思います。
具体的な作業とは別に、毎回実際にゲームで遊ぶ時間は必ず設けたいと思っています。様々なゲームに触れて肌感覚を養うことも重要だからです。
次回は、前回体験して大いに盛り上がりつつも時間の関係で知財保護の観点での議論に進めなかったラブレター及びその類似ゲームを再度体験します。<大方針>「ゲームのルール()は知財で守られる」ということの啓発<施策>ゲームのルール()という主語の大きさの解消、そのために、ゲームのルール()をより詳しく階層分けし、保護されるべきラインを具体的に提示する。・例えば、じゃんけんのルールを知財で保護するというのは、「ゲームのルールだから」ということではなく、単なる概念を知財として保護することはありえないということであって、「ゲームのルールが保護されない」ということではない。
・他方、知財による保護が求められるゲーム、保護されるべきであると考えられるゲームというのは、コンポーネントの構成を含めてどこかしらに「新しさ」があるはずであり、そこに特許性が生まれるのではないか。
・つまり、ゲームのルール()について、各種の具体例とともに定義づけしてレイヤー分けすることにより、(新規性や進歩性は別にして)発明として保護されるレイヤーをなるべく具体的に示すことにより、ゲームの特許出願を奨励することに繋がる。
・知財保護の大きな目的は「競合品の排除」であり、普及品を使用して遊ぶ、つまり専用品の売り上げにつながらないようなゲームの保護は知財保護にはそぐわない。専用品の売り上げに寄与するような知財こそがゲームの知財として必要な保護であることを啓発していく。<レイヤー分けのたたき台>※もっと細分化する必要がある
・レイヤー1 単なる概念 じゃんけんのルール、いっせーのーせのルール等、遊ぶために何らの道具も必要としない
・レイヤー2 普及品による遊び トランプのゲームやサイコロのゲームのように、普及品を利用して遊ぶもの
・レイヤー3 専用品による遊び 特許7201185、特許6990208のようなもの<具体的な作業、検討事項>
・より多くのゲーム特許の登録例を収集し、「ルールは保護される」ことの裏付けやレイヤー分けの参考情報とする
・より多くの実在のゲームを体験し、レイヤー理由の参考とする。
・アナログ、デジタル両方を検討対象として、様々なゲームのルール()をピックアップし、レイヤー分けの参考情報とする<その他の検討課題>
・実用新案制度の改正による保護
・保護される、ことを目指して保護事例のみを集める方針でいいか。保護されなかった、拒絶された例の検討というアプローチも必要か。
・現状においては概念、アイデアとして切り捨てられる部分でも、法改正などで救うべき部分はあるのか?(トランプで遊ぶ新しいゲームなど)
・普及品を用いた新しいゲームのルールはアナログの場合には普及品が売れるのみでルールを創出した者の経済的なメリットは無さそうだが、デジタルのゲームにすると経済的なメリットが生まれ得る。アナログ/デジタルで考え方に差をつけるべきなのか。
(前渋 正治・坂田 泰弘 記)